最初の問いは「なぜ、油は注ぎにくいのか」
オイルボトルの設計が始まったのは、ある月曜の朝のミーティングからでした。
日本のホームブランド様から「液だれしないオイルボトルがほしい」というご相談を受けたのがきっかけです。
よくある要望のようですが、設計チームの最初の反応は、シンプルな問いでした。
「なぜ、油は注ぎにくいのか?」
要望をそのまま「液だれ防止構造」に翻訳して図面を引くのは、たぶん一週間で終わります。でも、それだと「他社にもある液だれ防止オイルボトル」が一つ増えるだけです。
だから、要望の手前にある「困りごと」まで戻って考える ── これが、ZASA の設計の出発点です。
300 回、油を注いだ
設計チームの一人が、最初の三日間でやったことは、図面を引くことではありませんでした。
社内のキッチンで、いろいろなオイルボトルで、いろいろな量を、いろいろな角度で、ひたすら油を注ぎ続ける。延べ 300 回以上。
そして、こんなことが見えてきました。
・液だれの大半は、「注ぎ口の形」ではなく「注ぎ始めの 0.5 秒」で決まる
・人は、油を注ぐとき、無意識に手首を少し傾けすぎている
・容器の「重さの中心」が手前にあると、注ぎ過ぎが起きやすい
つまり、液だれは「注ぎ口の問題」ではなく、「人の動きと容器の重心の問題」だったのです。
ここから、設計の方向が一気に変わりました。
スケッチが 47 枚
方向性が決まってから、設計チームは 47 枚のスケッチを描きました。
注ぎ口の角度を 5 度刻みで変えたもの。把手の位置を上下に動かしたもの。底面の重心を前後にずらしたもの。一つ一つ、紙の上で検討します。
そのうちの 6 枚を 3D データに起こし、3 つを 3D プリンタで試作。試作品を持って、もう一度キッチンへ戻り、また油を注ぐ。
「設計とは、図面を引くことではなく、判断を重ねることだ」
これは、設計チームのリーダーが、新人によく言う言葉です。
量産の壁
3D プリントで「これだ」と思える形に行き着いても、そこからが本番です。
ガラスの吹き工程で、設計どおりの注ぎ口の角度を、ロットごとに安定して再現できるか。
把手の位置を 2mm 動かすだけで、金型の構造が変わり、量産コストが大きく動く。
ガラスメーカーの担当者と何度も電話とビデオ会議を重ね、「設計上の理想」と「量産現場の現実」のあいだで、もう一度判断を繰り返します。
最終的に、リード文のあるオイルボトルは、
・最初のスケッチから約 4ヶ月
・47 枚のスケッチ
・延べ 600 回以上の注ぎテスト
・量産前の小ロット試作 3 回
を経て、日本のホームブランド様の棚に並ぶことになりました。
ZASA が大事にしていること
ZASA には、いろいろなことを声高に言わない設計チームがいます。
要望をそのまま図面に翻訳するのではなく、要望の手前まで戻って、自分の手で問題を確かめる人たち。
スケッチを 47 枚描き、油を 600 回注ぎ、ガラスメーカーと何度も電話する人たち。
「能力」や「実績」は、こういう一つ一つの判断の積み重ねでしかありません。
スペック表に載るのは結果だけですが、その背景には、毎日机に向かっている人がいます。
今回はその一端を、お伝えできればと思いました。
OEM / ODM のご相談、設計に関するご質問は、いつでもお気軽にどうぞ。



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